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WordCamp男木島2018 参加レポート

カテゴリ: WordPress

WordCamp男木島2018に参加してきましたので、そのレポートを簡単に記したいと思います。

WordCampについて

チャーター便にかけられたWordCamp男木島の横断幕

会場に張られたWordCamp男木島のポスター

バーベキュー懇親会の会場に立てられたWordCamp男木島の旗

WordCampとは、WordPressに関わる人々(開発者やユーザー)のコミュニティによって開催されるイベントで、勉強会や情報交換のイベントとしてはWordPressに関するものの中で最大規模となります。なお、コミュニティが開催するイベントなので基本的に非営利です。「WordCamp US」や「WordCamp Europe」といった国や地域、「WordCamp Boston」のような都市の名前を付けて「WordCamp 〇〇」という名前で、上記の例のように世界各地で開催されています。

日本ではこれまで、「WordCamp Tokyo」と「WordCamp Kansai(Kyoto, Osaka)」というように、関東・関西の2箇所で開催されています。

内容としては、2日間の開催で行われるのが定例になっていました。

1日目は「セッションデイ」と呼ばれ、いわゆるセミナーの形式で、登壇者が用意した内容を壇上で発表し、一般参加者がそれを傍聴するというものになります。ただし、ずっと決められた部屋で行うのではなく、大学の授業のように時間割りで複数の部屋で同時にセッションが行われるため、自分の聞きたいセッションを選んで部屋を移動してそれぞれ聞く、という形になります。

2日目は「コントリビューターデイ」と呼ばれ、WordPressに関わる方々が、コアやテーマ、プラグインのソースコードのレビューを行ったり、日本語への翻訳を行ったりしてWordPressに貢献する日、となっています(私はここ数年のWordCamp Tokyoのセッションデイしか参加したことがないですが)。

このような内容のWordCampですが、私が個人的に見聞きした範囲では、どうやら昨年辺りから「大都市圏だけではなく、もっと地方でも開催しても良いのではないか」という声があったようです。

男木島について

男木港から見る男木島の全景

男木島の道。両手を広げると塀と民家の壁に手が付くほどの細い道

そんな中、日本で初めての大都市圏以外の地方での開催となったWordCampがWordCamp男木島でした。

確かに「もっと地方でもWordCampを行っても良いのでは?」という声があったとしても、その初っ端が瀬戸内海の離島っていきなりハードル高過ぎませんか……?と感じるかもしれませんが、男木島には日本のWordPress開発に深くかかわっている方々が住んでいらしゃるのです(今回のWordCamp男木島2018の実行委員長の西川氏と副実行委員長の額賀氏)。

ということで、WordPressの勉強会に何度か足を運んでお話を伺っていると、自然と男木島という地名は耳に入ってきます(した)。

そのため、一見すると上記のように「何故離島で?」となり得るかもしれないところですが、「男木島だったら納得」ということで、個人的にはすとんと腑に落ちました。

参加の動機について

チャーター便から遠ざかる高松を見る

とはいえ、男木島は関東からは正直遠いです。

電車だと、東京駅発岡山着の新幹線のぞみで約3時間半、岡山から男木島へフェリーが出ている高松まで快速マリンライナーで約1時間、待ち時間など合わせると約5時間かかります。

また、高松からフェリーで男木島まで約40分。

それでも、個人的なことで恐縮ですが、四国の地を踏んだことがなく、まして離島に行くという経験は、おそらく今回のような機会が降って湧いてこない限りはそうそうないだろう、と思いました。

そう、人生初の四国かつ小さな離島に行くという経験をするには、今回のWordCampは良い機会でした。

そのため、WordCamp男木島の話を最初に聞いたときから、行けるならば行きたいと考えていました。

チケット完売

とはいえ、アクセスのハードルがかなり高いことは確かなので、チケットは比較的余裕をもって入手できると考えていました。しかし、蓋を開けてみたらチケット発売開始日、ものの数時間程度で完売という圧倒的なスピードでした。販売開始後、若干迷いも持ちつつどうしようかと思って数十分後にチケット残数ページをリロードしたら、30枚程度しか残っていなかったという減りの速さを目の当たりにして、慌ててチケットを購入したのでした。

当日の流れ

WordCamp男木島のハッシュタグとわぷーが描かれた黒板

体育館に吊るされた飾りつけ

WordCamp男木島2018は、上記に挙げたような今までのWordCampからすると、かなり特殊なケースだったと思います。

まず、会場は男木島小中学校体育館。7月半ばという暑さが厳しい中(蓋を開けてみれば超猛暑だったという……)冷房はなし。

体育館というスペースの関係からか、タイムテーブルは一列(複数のセッションを同時で開催しない。1つずつ)。入場は実行委員会がチャーターしてくださった船か、定期便の船のどちらかを使い、港から会場の体育館まで約10分歩く。

一方、帰りというか懇親会を含めてのタイムスケジュールはバリエーションに富んでいました。

例えば、WordCamp Tokyoは終了後帰るか懇親会まで参加してから帰るかの主に二択だと思われます。しかし、WordCamp男木島2018ではまず懇親会が2つの会場に分かれており、男木島に残ってキャンプ場まで移動してのバーベキュー懇親会、または高松に戻っての高松での懇親会。さらに、男木島に残った後はバーベキュー懇親会の後に高松まで帰るか、そのままキャンプ場でキャンプ泊をして翌朝まで過ごすかという分岐が発生します。つまり、

  1. セッション終了後に高松まで戻る
    1. 高松到着後、そのまま帰る
    2. 高松会場の懇親会に参加する
  2. セッション終了後、男木島に残ってバーベキュー懇親会に参加する
    1. バーベキュー懇親会後、高松に戻る
    2. キャンプ場に残り、翌朝までキャンプ泊

という形です。

今回私は、バーベキュー懇親会まで参加してから高松に戻る、というケースを選びました。

セッション

以下、各セッションについて簡単にまとめます。

1. もっと知りたいWordPress

WordPressのことを一問一答形式で紹介していくセッション。

WordPressをまだ何も知らない初心者の方にも分かりやすく、基本から紹介していくスタイルで、入門的な内容でした。

WordPressの使い方
  • ブログ
  • Webサイト
    • コーポレートサイトから、オウンドメディアのメディアサイトまで
  • アプリケーションプラットフォーム
    • WP REST APIを使って、WordPressを完全にバックエンドとしてのみ使うようなケース
WordPressのテーマやプラグインの数
  • テーマ: 約6,000
  • プラグイン: 約55,600
    • ※ただし現在使用されていないプラグインも含む
    • ※共に公式ディレクトリに公開されているもの
使用率
  • 全Webサイト中の利用率: 約30%
  • CMSの中での利用率: 約60%
  • 日本内のCMS中での利用率: 約80%

日本ではWordPressの利用率がダントツで高い。

WordPressのカスタマイズをするに当たって

オンラインサポートで質問をしたり、各地域の勉強会に参加したりと、オンライン・オフライン共にサポートがある。また、ネット上での参考記事も多いので、自分で勉強できるどんどん勉強することが大切。分からないところがあったらサポートや勉強会で聞くことができる。

勉強したらアウトプットが大切

とりあえずやってみよう。

2. How To Find Work You Truly Love

ミニマルな生活に憧れてニュージーランドに暮らすご夫婦の英語セッション。英語は適宜実行委員長の西川氏が日本語に翻訳。

WordPressのコミュニティやオープンソースの価値観に通じる、人生観のような達観したお話でした。

  • WordPressやインターネットを活用して、自分の好きなこと・やりたいことをやりながら生きていくか、というテーマ
  • これまでの人生で、色々な人たちから学びを得た
    • 両親や上司、WordPressコミュニティの人たち、そして友達
  • 自分の知っていることは他人の知らないことかもしれない。共有(シェア)して受け入れられるかどうかは相手次第だけど、まずシェアしてみようという試みが大事
  • できることから、小さく始める。自分の価値を提供し続け、相手には寛大であり、自分には自分自身の情熱が本当はどこにあるのか。何をやりたいのかを問い続けることが大切。そのために、静かに自分と向き合う時間を作る
  • なるべく他人に影響されず、全部自分でできることが大切。他者の影響を受けると、本当に自分が何をしたかったのかを見失うことが多いため

特に自分が本当にしたいことは何かと自問自答することと、できることから小さく始めることの2つは印象に残りました。

3. 離島でも生きられる

男木島図書館の外観

男木島図書館の看板

今回のWordCamp男木島2018の副実行委員長でもあり、男木島図書館の理事長である額賀(福井)氏のお話。

なぜ男木島に移り住んだのか、なぜ男木島に図書館を作ったのか。そうした動機のお話。

  • 男木島に移り住む前は8割がWPの仕事で、離島でも働くことはできた
  • 男木島の学校は廃止されていた
    • 移り住むに当たって、子供が通う学校がなかった
  • 学校は再開されることになったが、自分の子供が卒業してまたがっこうがなくなったら、子供が島にいられなくなる。それでは折角再開した学校の意味がなくなってしまう
  • そこで、子供の学習環境を整えること、そして地域コミュニティのために図書館を立ち上げる
  • 最初は移動図書館として、自分のやりたいこととその理由を説明し、認知させていく
  • 同時に、Webサイトでファンを増やしたり、SNSで認知度を上げたり、クラウドファンディングで資金を集めたり
    • そうして、古民家を改修して図書館に
  • 「誰かに強制されずに、何かに貢献する」という姿勢はオープンソースの哲学に近い
  • Web上の活動とリアルの活動、仕事と地域での活動が、共通点が結びついていく
  • 今まで「仕事」「趣味」などが点がバラバラに存在し、それぞれに時間を割いていくようなイメージだった
    • それぞれが繋がり、「点」ではなく「面」として連続した活動

ある一人の人の人生、あるいは総合的な「生き方」「哲学」といえるような、非常に興味深いお話でした。

4. 明日からできるデザイン・コンテンツのアクセシビリティ入門2018

連続するアクセシビリティのセッションの初段。

アクセシビリティというと身構えてしまって難しいことと考えがちだが、Webサイトは「より多くの人へ情報を届ける」ためのツールとして、あるだけでもアクセシブルともいえる。というところから少しずつ始めるアクセシビリティの入門編。

情報の受け取り方、Webサイトの操作方法

特に、Webは書籍などと違って情報の受け取り方が多種多様。

  • SNSなどに実装されている夜間モード(色調暗転)
  • 余計な装飾を省いて文章のみに集中できるスクリーンモード

といった、ブラウザやツール上での機能としての見た目の変更や、

  • 読み上げのスクリーンリーダー
  • 手が不自由でマウスが上手く操作できない方はキーボード操作を行う
  • 他言語を母国語とする方は翻訳を行う
  • Google HomeやAmazon Echoのような音声での操作

といった、多様なツールによる捜査を受ける。そこで、それらをどう考え、対応するか。

障がい者の割合

何らかの障がいを持っている方は、日本国民の6%に及ぶ。結構大きな数字であり、すぐ隣にもいらっしゃるかもしれない。「自分には関係ない」とは思わず、身近な問題であると認識しよう。

アクセシビリティの担い手

アクセシビリティはきちんとコーディングする、プログラム的な実装をする、ということだけではない。色(コントラスト)やフォントなど、デザイナーも関わるし、どこまで対応するかはディレクション次第なところもある。Webに関わる全ての人で作るものである。

5. 明日からできる自作テーマ・受託プロジェクトのアクセシビリティ入門2018

アクセシビリティは「品質」

  • マシンリーダブル(機械が情報を正しく解釈できる)
  • ヒューマンリーダブル(人に正しく情報を伝えられる)

マシンリーダブルに関しては、HTML5の規格に準拠したコーディングを心がければ自然と達成されることも多い。セマンティックなコーディングを心がける。

疑似要素

疑似要素での装飾画像はアクセシビリティ的にはお勧めしない

  • cssが読み込まれないと消えてしまう(スクリーンモードや、回線状況など)
  • 逆にスクリーンリーダーでは疑似要素は読み上げられてしまう

HTMLでaria-hidden="true"を使ってコーディングすれば、スクリーンリーダーは読み上げない。

aria属性はBootstrapで見たことも多いはず。

alt属性

装飾画像はあえてalt=""と空欄にすることでスクリーンリーダーに読み上げさせない、ということもできる。

アクセシビリティ対応テーマ

@mirucon 氏の作成したColdboxのGithubにアップされているVersion1.6.0はアクセシビリティ対応テーマになっている。

休憩

さすがに暑さで集中力が持たなかったので、休憩時間~次の「Growing in WordPress: One Story.」にかけては休憩していました。

7. WordPressを始めよう。サーバのこと教えて!

さくらインターネットの中の人が教える、WordPressを始めるにあたってのサーバや契約の選び方の入門。

専門的な話はあまり語らず、ざっくりと下記3つの違いを紹介。

  • レンタルサーバ
  • WordPressホスティング
  • VPS / クラウド

それぞれのメリットデメリットの比較と、ユーズケースに応じての適不適など。

本当にこれからWordPress何かを始める、というときの入門ガイドになるような内容でした。

8. WordPressのことをよく知らないパン屋がみたWordPress

今回のWordCamp男木島2018のランチ250人分を作ってくださった島内のパン屋さん「ダモンテ商会」の方のお話。

ランチボックスの中身。サンドイッチ2種ともち麦のパエリア、野菜のトマトソース煮の4品

内容より前にまず一言。ランチ美味しいかったです。ごちそうさまでした!

パンを焼くこととオープンソースのコミュニティの類似性

  • 男木島に来るより前にパンを焼いた回数は3回
  • パンは毎日環境や材料などの非常に多くの変数によって微妙に変化し、一日もまったく同じパンを焼くことはできない。それが面白い
  • パン屋さんのイメージ:
    • 一般の人から見たパン屋さん: パンを焼く人
    • パン屋さんから見たパン屋さん: 酵母が働いてくれる環境をいかに整えることができるか、酵母環境の管理
      • パン屋さんはキックスタータ(外部から刺激を与える人・もの)であり、刺激を与えられた内部(パン酵母)が活動する
        • 外部から刺激を与える人と、内部のコミュニティ(パンの酵母は超ミクロな世界のコミュニティと捉える)という関係は、パンとオープンソースの世界は似ているように感じる
      • 一人一人の力は小さいかもしれないけど、刺激や力を与えることでそれぞれの活動が大きなことに成長していくかもしれない

哲学的な面

  • やりたいことをする。稼ぐことを諦めない。
  • WordPressの良いところ:
    • 自分のハンドルは自分での握ることができる。WordPressで積み上げたコンテンツはブログサービスやWebサイト作成サービスのように、コンテンツの中身を他者に影響されない。
      • これは午前のセッション「How To Find Work You Truly Love」でも同様のことが言及されていた
  • WordPressは仕事上のメインディッシュではなくスパイス
    • がっつり開発したり使ったりするのではなく、ほんのちょっと使えるところを自分のやりたいことのサイクルの中で利用するだけ
      • 巨人の上の小人、のようなモデル
      • こういう使い方もあり。どう使うかも自由なので、WordPressならではの関わり方ともいえる

9. 15周年記念・WordPressでできること大全

WordPressの開発や貢献で深く関わっている高橋文樹氏と高野直子氏の対話式セッション。

WordPressでできることや活用事例の紹介で、「こういうWordPressの使い方もアリ!」という事例がたくさん取り上げられた。

特に最初のセッションでちらっち触れられたWordPressをアプリケーションプラットフォームとして使う事例については、技術的な側面を交えて言及されたので、非常に興味深かった(うち1つは私も参加させて頂いたWordBench東京のREST APIの会で取り上げられたサービスだったので、個人的にはデジャブ感もあった)。

バーベキュー懇親会

懇親会会場への道から見た海

海に沈む夕日

夕焼けに浮かぶ男木島灯台のシルエット

男木島灯台のシルエットと夕日

男木島灯台と月と星

バーベキューをしながらの懇親会。約40分徒歩で、体育館から港を抜けて灯台ふもとのキャンプ場まで移動。暑さでバテバテだったので行けるかどうか若干不安でしたが、無事辿り着けました。

美味しいお肉を食べて、色々な人と話をして。

日没を見て、明かりがともった灯台を見て。月と星を見て。キャンプファイヤーをして。

あっという間に時間が過ぎて、気付けば一日が終わっていました。

全体を通して

今回のWordCampは専門的・技術的な話はあまりなく、総じて「WordPressを人生の上でどう活用し、関わっていくか」という人生哲学のようなメッセージ性の高い内容が多く感じられました。

あの暑さの中技術的な話をされても付いていける自信はないので、その辺りも踏まえての内容だったのかな、と思いました。コンビニもない、交通の便も限られる、ないない尽くしの離島で、海を始めとする大自然に囲まれた美しい景観と自然体に近いミニマルな暮らしの雰囲気を感じながら、人生や哲学を自分自身に問うセッションのメッセージ性と相まって、「一人ひとりの力」という今回のテーマに即した、非常に貴重な体験ができたと同時に、貴重な機会だったのだと思います。それらを含めて、よく練り上げられたイベントだったのではないかと、一人の一般参加者として感じました。

WordCamp Tokyoしか参加したことがなかったので、こういうWordCampも良いな、と思いました。

余談

東京駅にあったYAMAHA RTX830の広告

東京駅でYAMAHAのルータ「RTX830」の広告を見かけたのでパシャリ。

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